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インタビュアー:原田 千耶子

Q. 競技の魅力を教えてください

自転車競技の魅力はマシーンと一体になって圧倒的なスピードを繰り出せることです。
自転車はお母さんのスーパーへのお買い物や高校生の通学、子どもの遊びなど誰もが当たり前に目にしたことがある物。そんな生活に身近な乗り物ですが、競技用自転車になった瞬間、一漕ぎで出せるスピードが時速80kmと、圧倒的に変わります。人間の脚力から繰り出されるパワーのみで、エンジンのない2輪のマシーンがスピードを生み出す、そのスピードと迫力がこの競技の魅力だと思います。
また、パラサイクリングに出会ってから知ったのですが、一見障害によっては自転車なんて乗れないのかな、と本人も周りも思っていることが多いけれど、障害に合わせたマシーンが多種多様にあって、本当に多くの人が乗れるんです。車輪が補助となり、健常者と損得ないスピードが出せることはパラサイクリングの魅力です。

Q. 競技に出会ったきっかけは?

サポーターを募集していた大学の自転車部を覗いたことが自転車競技に出会ったきっかけでした。
小学生では陸上やバドミントン、中学ではソフトテニス、高校ではフェンシングと、スポーツが大好きで色々やってきたのですが、大学へは競技者ではなく、サポート側に回りたいとトレーナーを志望して進学。
サポートを募集している部活動の中から、「ジャパンもいるよ!」と言う自転車競技部のフレーズに、通学に使う"自転車"しか知らなかった私は、ナショナルチームがある自転車とは何?と興味をひかれマネージャーとして入部しました。
マネージャーとして2ヶ月くらい経った時、インカレの女子総合優勝を狙う際にポイントが必要なこともあって「選手が少ないから乗ってみない?」と当時世界で活躍していた先輩に誘われ乗ってみたことが競技を始めるきっかけでした。
パラサイクリングに関しては、ナショナルチームを外れ、実業団最後のレースで引退、と決めていたところに、男子選手のパイロット(視覚障害者選手と一緒に乗り、ブレーキ、ギア、ハンドル操作などをする人)をしている競輪選手の繋がりで、「女子選手のパイロットを探しているんだけどやらないか?」と誘われたことをきっかけにスタートしました。2012年〜2014年までやっていました。

Q. コーチを目指すきっかけや、そのプロセスについて

元々自転車の会社に勤めていて、勧められて公認コーチ資格をとった後に、自転車競技のレースや合宿を運営する部署へ移動となったことがきっかけでコーチを目指すようになりました。
移動部署がアジアサイクリングセンターというジュニア育成認定施設であり、私自身の現役時代のコーチが選手達に指導している現場でもありました。そのコーチについてまわるうちに教わる側と教える側で見える景色が全く異なること、そして選手の時には知り得なかった全てのトレーニングプログラムやコミュニケーションに意図があることに面白さを感じ、本格的にコーチとして勉強を始め活動をスタートしました。元々パラサイクリング競技でパイロットをしていたこともあり、パラサイクリング競技のロードとトラック種目の両方をコーチングしています。

Q. コーチングをするうえで、大切にしていることは何ですか?

観察と基礎です。
基礎に関しては、自転車、ウェイトトレーニング、他のスポーツ、何をする時でも大事にしています。基礎なしでは応用が効かず、一時的に成績は上がるトレーニングはできても段階的なレベルアップは見込めません。必ず頭打ちすると感じています。
それは指導者も同じで、ベーシックな知識をブレず持っていることで、選手を迷わず導いてあげられます。今の時代、選手もSNSなどからたくさんの情報を拾えるようになった中で、金メダリストが取り組んでいるプログラムをしたい、と言ってきた場合にも冷静にその選手のフェーズに合っているのか?それよりもパワーが必要だからウェイトトレーニングをまず行おう。など、基礎は整っているのか?と疑い、アドバイスを入れられるようにしています。それでもたくさんの情報の中から選べなくなった時は「迷った時はベースに戻れ」という言葉を大切にしています。
観察に関しては、少しの緩みや疲労によって大事故に繋がってしまう競技だからこそ、選手の表情や仕草を常に観察し、少しでも気になることがあった時はすぐ話を聞くようにしています。そのコミュニケーションによって練習メニューを減らしたり、「1本減らすから最後集中して!」などの声がけをして強化だけを優先するのではなく、未然に防げる事故をなくすよう観察を大切にしています。

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PROFILE INTERVIEW

プロフィールインタビュー

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日本パラサイクリング連盟

沼部 早紀子
SAKIKO NUMABE

専門競技:パラサイクリング

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Interviewer's Comment

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インタビュアー:原田 千耶子

自転車のトラック競技という激しいスポーツをしていたとは想像できない、とても物腰が柔らかく笑顔の多い早紀子さん。しかしインタビューをしていく中でそのおおらかさの中には強い芯があり、選手達はもちろん周りのスタッフも信頼して全てを任せられるコーチなんだと感じました。色々な偶然が重なって今のポジションに立つことになった、とおっしゃっていましたが、自ら学びを深め、着実に全身する姿は「かっこいい」という言葉がぴったりです。私も同じように危険と隣り合わせの種目であるため、お話に共感することが多く、中でも「観察を常に」という考え方が印象的でした。インタビューでたくさんの気づきをいただきました。これからも学ばせていただきたいと思いました!

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