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海外研修代替イベント1日目〜3日目振り返り

更新日:3月31日

女性コーチの少なさの理由の一つとして、ロールモデルの少なさが挙げられています。コーチに限らず、リーダーシップを発揮する立場に女性が少ないことが、次の世代が自分のキャリアの選択肢としてリーダーシップを発揮する立場を思い描けないことの原因になっているとされています。最近では日本でもいくつかのスポーツでは女性コーチが少しずつ増えてきている印象はありますが、やはり男性に比べると圧倒的に少ない現状があります。


しかし、海外に目を向けると、少ないながらも様々な困難に立ち向かい、エリートコーチとしてのキャリアを力強く歩んでいる例を見つけることができます。文化の違いはあれど、このようなロールモデルに直接触れ、そこから自分のキャリアの在り方に関するアイデアを得ることは、私たちが展開する女性エリートコーチ育成プログラムにおいても重要なことと位置づけていました。しかし、新型コロナウイルス感染症パンデミックにより、海外へ渡って直接ロールモデルとなる人たちと対面することは諦めざるを得ませんでした。そこで、急遽オンラインでの国際座談会開催に切り替え、直接対面式では困難であった複数の国の例に一度に触れることができる機会を創出することにしました。


今回のブログでは、2021年2月16日(火)から2月18日(木)にかけて、海外研修の代替策として実施したオンラインでの座談会の概要をお伝えするとともに、この3日間での私(伊藤)の学びを簡単に振り返ってみたいと思います。

2月16日(火)

ポーリーン・ハリソンさん(国際コーチングエクセレンス評議会コーチングにおける女性活躍推進委員会リーダー)をお招きし、女性コーチを取り巻く様々な課題についてグローバルな視点から考えました。ハリソンさんは私たちのプログラムにいつも協力してくださり、私たちのプログラムで学ぶコーチたちを世界につなげる大切な役割を果たしてくださっています。なぜ女性コーチが必要なのか、どのようなスキルを身につける必要があるのか、もしも何でも実現させられるスーパーパワーがあったら何をするか、といったことを話し合いました。

私がその時に思いついたスーパーパワーは、男女のジェンダーステレオタイプに関する自分自身と他者のマインドセットのリセット、というものでした。田舎で兼業農家をしている家に3人姉弟の末っ子(姉、姉、私)として生まれ、跡取り息子という言葉を頻繁にかけられていました。私の中にもどこか「男は」という意識が無いわけではありません。きっと自分の家族にも無意識のうちにそのような声かけをしていたのではないかと反省しています。とはいえ、小学生時代(1学年1クラス)は男子10名、女子26名というアンバランスな環境の中で過ごし、男女で意見が分かれた際の多数決では女子に必ず負けるという経験をしてきました。「こんなの不公平だ」と叫んでいたのを思い出します。この経験も、今の私の考えにポジティブな影響を与えてくれたのだろうと振り返っています。

2月17日(水)

カナダからペニー・ワースナーさん(カルガリー大学体育学部学部長、スポーツ心理学者、元陸上競技オリンピアン)、クリスティン・ビグスさん(カルガリー大学女子バレーボール監督、カナダ・シッティングバレーボールチームコーチ)、ダイアン・カルバーさん(オタワ大学准教授、コーチング学者、コーチングの実践コミュニティー研究の第一人者)の3名をお招きしました。


2度目のオリンピック出場をボイコットという形で失ったワースナーさんから、競技と並行しておこなっていたスポーツ心理学の勉強が今のキャリアに役立っているという話がありました。人生全体の中にスポーツをどのように位置づけて実践していくかということ、男性中心のスポーツ心理学領域の中で仕事をしていくために博士号を取得しようと思ったことなど、カルガリー大学の体育学部学部長にまでキャリアを進めてきたワースナーさんの人並みならぬ努力を垣間見ることができました。


ビグスさんからは自身のキャリアパスにおけるロールモデルの重要性を語って下さいました。信頼できる、先を歩んだ女性コーチの存在が自分の歩む道を示してくれたという話を聞くことができました。

カルバーさんは、女性コーチにとっての実践コミュニティーの重要性について語って下さいました。コーチだけの実践コミュニティーでなく、様々なステークホルダーを巻き込んだ実践コミュニティー作りという、我々が考えていた実践コミュニティーよりも拡がりのあるコミュニティー作りを提案して下さり、私としても新しい領域の人たちをどう巻き込んでいくことができるかを考えるきっかけになりました。


海外研修代替イベント振り返り

2月18日(木)

アメリカからナディーン・デュビナさん(米国オリンピック・パラリンピック委員会コーチ育成マネージャー)と伊奈恭子さん(フィギアスケートコーチ、オリンピックメダリスト)をお招きしました。


デュビナさんは私たちの別のプロジェクト、日体大コーチデベロッパーアカデミーの修了者です。体操競技選手だったデュビナさんは怪我によってアスリートとしてのキャリアを断念せざるをえず、その後コーチングの道に入り、大学院でスポーツ心理学を学び、USOPCで仕事をする傍ら、東京でコーチデベロッパーとしての学びを得ました。彼女のUSOPCスタッフとしての仕事はこの座談会が最後で、新しく陸軍士官学校のリーダーシッププログラムに関わっていくことになっています(この日が新しい仕事の2日目)。コーチングをベースにしたキャリアパスはスポーツに留まらないことを知ることができました。また彼女から示された勇気と脆弱性(Courage & Vulnerability)の話はとても印象的でした。真の勇気とは何か、自分の心に偽りのない人生を歩んでいるか、私自身も深く考えさせられました。


伊奈さんからは、ジュニア選手時代の日本での辛い思い出を共有してもらえました。この話をするだけでも勇気が必要だと思いますが、それを語って下さったことに対してとても感謝しています。伊奈さんはジュニア時代には日本選手として大会に出ていたそうですが、日本語のアクセントや振る舞いなどが日本人らしくないという、心ない言葉をかけられたそうです。最近、テニスの大坂なおみさんに関しても「日本人」についての話題が持ち上がりましたが、時代が進んだ今でも、多くの人がこの問題で伊奈さんと同様の苦しみを味わっていることをとても残念に思うとともに、グローバルにおこなわれているスポーツだからこそ、この風土に風穴を開けて社会の変化をリードしていくことができるはずだと思いました。


海外研修代替イベント振り返り

この3日間、女性エリートコーチとしての道を歩んでいくにあたって参考となる多くの考え方に触れることができました。私も、参加した全員の発言によって思考をストレッチされ、新しい学びを得ることができました。同時に、このプロジェクトの重要性を再認識し、より大きなムーブメントが起こせるように事業を展開していこうというモチベーションをかき立てられました。

3月2日(火)にはオーストラリア体操協会がクイーンズランド大学と共同で運営する女性コーチ育成プログラムNextGenプログラムとの交流が予定されています。異なる国でおこなわれている同様のプログラムに参加するコーチらと交流することは、プログラムを計画した当初は全く考えていませんでした。このイベントが待ち遠しく感じます。(伊藤雅充)


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