
本学が今年度からスポーツ庁から受託した「女性アスリートの育成・支援プロジェクト『女性エリートコーチ育成プログラム』」の第2回研修会が、2020年10月19日~10月23日に行われました。
第2回研修会は「コーチングの下ごしらえ」 をテーマとし、1回目のメンバーで引き続き、
以下のゴールを目指して実施しました。
【第2回研修会の全体ゴール】
実践コミュニティ(以下CoP)を通じた課題解決方法(ケースクリニック)を理解し、解決に向けたいくつかのオプションをもてるようになる
安全で安心な環境を整備するため、考慮すべき内容と具体的な対処方法について整理できている
コーチング環境充実に向け、協力を取り付けるべきステークホルダーを整理できている
自身のコーチング現場が持つ前提認識を理解している
良好なコーチ・アスリート関係を判断する3Cs +1の概念に理解を深め、4つの要素を促進or阻害するコーチの言動について整理できている
良好なコーチ・アスリート関係を築いていくためのコミュニケーションスキルについて、自身の強みと弱みを整理し、課題が明確になっている
第2回OJT実践計画が策定され、具体的な取り組み内容が明確になっている
研修は合計5日間、以下のスケジュールで行われました。
【スケジュール】
1日目:OJT実践報告
2日目:安心で安全なスポーツ環境の整備
3日目:チームを取り巻く関係者に理解を深める、コーチング現場の文化を読み解く
4日目:コーチ・アスリート関係を構築する
5日目:ロールプレイ、第2回OJTアクションプラン立案
◆研修第1日目「OJT実践報告」
研修のスタートは、参加者全員が「今日、自分はどのようなことにチャレンジしたいのか、どのようなスキルを伸ばしたいの?というパーソナルゴールを決めました。
現状の把握~課題を把握し、OJTにわかりすく発信すること
参加加者のケースクリニックを通じて、コーチングの課題を明らかにして、堅実的な解決策を見つけること
研修での経験を皆で共有し、あたらしい気付きを得て自分のスキルアップにつなげること
など各自意欲的にゴール設定をしてスタートしました。
その後は3グループに分かれて、1ケースクリニックについて25分、全4回実施。
各ケースクリニックについては、話題決めからスタートし、話題から見えた課題の解決に向けたアクションプランまで、グループワークで取り組んでいきました。
各グループでは、真剣な中でもリラックスして、お互いディスカッションが弾みました。
グループワークの様子

◆研修第2日目「安全で安心なスポーツ環境の整備」について
2日目は、安全で安心な環境を整備するために考慮すべき内容と具体的な対処方、また、対処に向けた具体的な行動について説明できることを目標に、各自パーソナルゴールを決めてから取り組みました。
新しい知識、視点得ること
いろいろな意見を聞く中で解決策を考える
オリパラ競技の違いと共通点を自分 なりにまとめる
等、各自目標設定をしました。そこから「倫理的判断力、安全管理、人権」に関連した時事ネタについての対処法を、安全で安心なスポーツ現場を整える方法を整理するケーススタディーを通して検討。グループに分かれてディスカッションしていきました。
◆研修3日目「 チームを取り巻く関係者に理解を深める(ステークホルダー分析)
&コーチング現場の文化を読み解く(組織文化の分析) 」
3日目は、より良いコーチング環境を作るために欠かせない「充実した現場の体制作り」をどのようにしていけばよいか、その第1歩となる「コーチング現場に関わる人の整理」と、「協力を仰いでいくステークホルダーの分析」を実践。
各グループに分かれ、「Mind Meister」というソフトを使い、オンライン上で整理をして盛り上がりました。
図はコーチ(自分)をとりまくステークホルダーの整理の一例

また、後半では組織開発・人材開発をする際に、摩擦を生まずに本質的な変化をもたらすことができるよう、
「文化の三層分分析(人口の産物、信奉された信条と価値観、基本的な深いところに保たれている前提認識)
免疫マップを使った個人あるいは組織の分析
という手法を用いて、コーチング現場に根付いた文化や風土、前提認識等のあぶりだしを行いました。
◆研修第4日目「コーチ・アスリート関係の構築」や「 コミュニケーションスキルに関するSWOT分析」
4日目は、そもそも良好なコーチ・アスリート関係は何なのかから、
前半で良好なコーチ・アスリート関係を判断する3Cs +1の概念について理解を深め、それらの4つの要素を促進するコーチとしての行動や、阻害する言動は何かを、グループ単位で整理していきました。
3Cs+1モデルとは(Jowett, 2004) Closeness:親密さ Commitment:コミットメント Complementarity:相補性 に以下が付け足されたもの。 Co-orientation:共通の方向付け
3Cs+1モデル(以下)について、オンライン付箋をつかって整理する「Jamboad」ツールを使い、グループごとに整理していきました。
後半では、良好なコーチ・アスリート関係を築いていくための具体的なコーチング行動をとっていけるよう、自身のコミュニケーションスキルを高めるためのテーマを設定。
良好なコーチ・アスリート関係を築く望ましいコーチング行動に関して学習してきたことを踏まえ、
以下の手法を使って分析。
● SWOT分析
● クロスSWOT 分析
今回は個人ワークを行い、その後グループごとに発表して話し合い、各自今後の成長計画立案に役立てる力を育てました。
※SWOT分析とは PEST分析、3C分析、5フォース分析などと絡めて、ビジネス界で新規事業や自社の現状
分析をするときに用いられる手法であるが、自己分析にも応用されている。
※クロスSWOT分析とは、強み・弱み・機会・脅威の4象限に分け、各象限でとるべき行動を具体的に列挙
していく分析方法をいいます。
◆研修第5日目「 コーチ・アスリート関係を構築する(ロールプレイ) 」「 第2回OJT実践計画立案 」「 プレゼンテーション実践 」
最終日5日目は、他者とのコミュニケーションに関する課題を明確に、具体的なアクションを明確にするために、以下のワークを行いました。
【5日目のプログラム】
1. パーソナル目標設定
2. ロールプレイ
3. OJT実践計画立案
4. 立案した計画のプレゼンテーション
5. 第2回研修全体の振り返り
ロールプレイ詳細
ロールプレイでは、グループに分かれ、ひとり15分で実施。 練習したいスキルや条件を決め、本人がコーチ役となり、メンバーが必要な役柄や観察者配役を決め、グループメンバーに説明していきます。
ロールプレイ終了後は、プロフェッショナルディスカッションの時間を設け、観察者がファシリテートしながら、以下の点を振り返りました。
・よかった点
・変化させられる点
・他のやり方案
・アクションプラン
OJT実践計画立案詳細
この時間では第3回の研修までに実施するOJT内容の全体像を把握することに注力し、「成長計画シート」を使ってグループワークを実施しました。
【OJT実践計画立案の手順】
1.長期の成長目標
2. 中期の成長目標
3.パフォーマンス・プロファイリング(1回目)
4. パフォーマンス・プロファイリング(2回目)
5. 第2回OJTの成長目標を設定しましょう
6. 第3回研修会までの行動計画(短期計画)
7. プレゼン準備
上記をうけて、次のセクションでは、一人2分以内でOJT実践計画のプレゼンテーションを実施。
プレ ゼンをする上でパーソナルゴールを設定して行いました。
パーソナルゴールでは「時間を守って発表すること」から「伝える内容が多いので要点を絞り相手にわかりやすくプレゼンテーションをすること」まで様々なゴールが掲げられ、実践されました。
第2回研修全体を通しての感想詳細
5日間全体を振り返って、参加者からは以下のような感想が寄せられました。
「ロールプレイングゲームでは実際現場で起こっていることを再現できたのでよかった」
「参加仲間が環境が近いので、OJTとしての悩みを共有したことで、次に何をしたらよいかアク
ションプランを計画することができた」
「目標設定が高かったことに気づいた、自分の生活の忙しさを言い訳にして行動ができていなかっ
たことを研修中に理解できた。次の研修会までにできることを確実にやっていきたい」
「参加者のいろいろな考えかたをケースごと触れることができたので、今後の自分のコーチングに
役立てたい」
全員が参加できない回もある中で、参加者全員が次の第3回目の研修にむけて、各自手ごたえを感じていました。
